がんはなぜこれほどまでに治りにくい病気なのでしょうか。
がん細胞にはいくつかの重要な特徴があります。
最近の研究ではがんはなぜこれほど免疫力に対して強いのか、その仕組みが少しずつ明確に分かってきました。
中でもがん細胞自体の仕組みだけではなく、それとは別の要因が癌の増殖に大きく関わっていることが近年分かってきています。
がんの増殖に一役かっていた細胞
あなたは免疫抑制細胞をご存知でしょうか?
免疫抑制細胞はもともと私たちの体の中に存在している細胞です。
この免疫抑制細胞の役目は本来は、わたしたちの体内の免疫力がなんらかの事情により暴走しないように、免疫の過剰反応を抑える働きがあります。
そういった免疫の暴走を抑えるブレーキの役割を持っているのが免疫抑制細胞です。
免疫の過剰反応というと、アレルギー反応や膠原病などの病気が真っ先に浮かびます。
ただ、それらの症状や疾患に免疫抑制細胞がどこまで関わっているのかは定かではありません。
しかしがんの増殖には大きく影響している可能性が研究により見えてきました。
がんが増えると免疫抑制細胞も増える
がん細胞の数が体内に増えてくると、なんとこの免疫抑制細胞もそれにあわせてどんどん増えてくることが分かってきています。
大量に増えた免疫抑制細胞の働きによって、免疫の要であるナチュラルキラー細胞をはじめとするリンパ球が、その働きを大幅に弱めてしまうことが研究でわかってきています。
免疫抑制細胞が癌を攻撃するはずの免疫系に対して、攻撃をしないような支持を出してしまっているということです。
それによって天敵ともいえる免疫細胞からの攻撃を癌は受けにくくなるので、どんどん体内でがん細胞が増殖してしまうのです。
製薬会社でもこの点にフォーカスして、免疫抑制細胞の働きを抑える薬の研究開発に力を入れているところも存在しています。
アメリカではこの免疫抑制細胞によって影響を受けてしまった免疫細胞に対して、ブレーキを解除するための分子標的薬などが一部承認されています。
まだまだ効果的な成果はそれほど無く今後の新薬開発が待たれる状況です。
代表的な免疫抑制細胞の種類
代表的な免疫抑制細胞は2種類あります。
・制御性T細胞 Treg
制御性T細胞はさまざまなアレルゲンや微生物、そして腫瘍などの細胞に対しても抑制的に免疫反応を制御している細胞です。
・骨髄由来免疫抑制細胞 MDSC
その名の通り骨髄の細胞でこちらも免疫を抑える働きをする細胞です。
腫瘍組織やリンパ節の周辺などに増えて強力な免疫抑制状態をつくります。
これらの免疫抑制細胞が増加することによって癌が免疫系をかいくぐり活動しやすくなります。
がんを直接攻撃していく治療法だけでなく、こういった癌をサポートしている細胞を一時的に非活性化させるような新薬の開発が近年注目をされています。
個人的には免疫抑制細胞がなぜ増えていくのか?
この部分の解明ががん治療、がん予防にも大きく関わっていると思うので、その部分についての研究成果を期待しています。