肝臓がんがかなり進行してしまって、手術ができない場合が時としてあります。患者さんとしては、やはりガンの腫瘍を手術で取ってしまえれば確実と思っていたが、それができないとなると化学療法を選択する形となります。

抗がん剤はできれば避けたいところですが、他に方法がなく仕方なく普通に医師が選択した抗がん剤治療をされる患者さんがいます。しかし肝臓がんは抗がん剤が効きにくい癌であり、治療成績もあまりよろしくありません。

そこで数年前から話題になっている『時間治療』クロノテラピーというやり方があります。今日は肝臓がんで手術ができない場合に効果的といわれている時間治療クロノテラピーに注目してみたいと思います。


肝臓がんで手術ができない場合は他に効果期な治療法はあるのか?

肝臓がんはある程度進行してしまったり、肝臓の複数箇所腫瘍が出来てしまうと手術ができない状況になります。そうなってくると、次の段階としては化学療法を選択するのが日本の医療の自然な流れです。

可能であれば肝臓がんに対しては抗がん剤はあまり有効ではありませんので、避けたいところです。というか腫瘍タイプの癌に関しては、抗がん剤自体が全般的に有効ではないと私は考えています。

血液系の癌や乳がんなどには一定の効果を抗がん剤に期待することはできますが、肺や肝臓、そして大腸がんなどに関しては抗がん剤の力で寛解にいたったという人はあまり聞いたことがないからです。

そうなってくると何か他の治療法で有効なものはないのでしょうか。肝臓がんに関しては、他の有効であると考えられている治療法は以下のものが浮上してきます。

日本の病院での一般的な肝臓がんの治療法は以下になります。

  • 手術療法
  • 局所療法(ラジオ波灼療法・マイクロ波凝固療法など)
  • 肝動脈化学塞栓療法
  • 化学療法(抗がん剤)
  • 放射線療法
  • 粒子線治療
  • 肝臓移植

手術療法とは

肝臓がんの腫瘍を切除する外科手術です。日本の医療の基準としては、癌腫瘍の数が1個であれば基本的に外科手術が選択されます。がんの腫瘍の数が複数ある場合は、手術が可能であれば手術を、不可能であれば他の治療法を選択します。

局所療法とは

局所療法というのは、超音波で癌の位置を確認しながら、体外から細い針を体内に刺してラジオ波を発生させることでがん細胞を焼いてしまう治療法です。局所療法には以下の条件があります。

  • がんの障害度が軽度から中程度
  • がんの腫瘍の数が1個であれば5センチまで。
  • がんの腫瘍が複数なら3個以内で直径3センチまで。

 

外科手術より肉体的負担は少なく、1回の治療時間は10分程度と短時間なのがメリットです。入院期間は基本的には3日~長くても5日程度。近年ではかなりスタンダード化してきた治療法が局所療法です。

肝動脈化学塞栓療法とは

この肝動脈化学塞栓療法を選択する場合というのは、がんの腫瘍の数が4個以上の患者さんが対象となります。この治療法は、太ももの付け根からカテーテル(細い管)を患者さんの冠動脈に送り込みます。

そして血管造影剤に抗がん剤を混ぜた薬剤を注入していきます。専用の手術用のゼラチンスポンジというものを使ってがん細胞へ流れる血液をせき止めてがんに栄養をいかないようにさせます。

治療時間は2時間程度で入院は長くて2週間くらいとなります。基本的には複数回、様子を見ながら治療を繰り返す形が基本となる治療法です。

化学療法とは

肝臓がんの場合、手術ができないような状況ですと、やはり抗がん剤治療が選択されること多いです。がんの腫瘍が4個以上となると抗がん剤が選択される場合が非常に多いです。通常これまで使ってきた抗がん剤は肝臓がんには効きにくいという側面があります。

近年では分子標的薬というものが普及してきており、がん細胞の増殖を抑えたり、がん細胞の栄養の供給する血管を新しく創るのを阻害する働きなどがあります。

ただやはり化学療法は副作用が強いものがあり、延命効果はあっても完治することは難しいのが現状です。

放射線療法とは

肝臓がんに対しては放射線療法が選択されることがあります。放射線をがんの患部周辺へ照射することでがん細胞を破壊することが狙いです。

ただデメリットが多く、健康な細胞まで広範囲に破壊してしまうことがあり、時に重篤な二次障害がおこる可能性があります。それを解消するために生まれたのが次の治療法です。

粒子線治療(重粒子線・陽子線)

粒子線治療は他の治療法と比べると、肝臓がんに関しては効果が高く期待できる治療法といえます。がんの腫瘍が少数であれば根治も期待できる治療法です。

粒子線治療とはわかりやすくいうと、重粒子線でいえば、炭素イオンを専用の加速器で光の速度の70%くらいまで加速させ、がん細胞へピンポイントで狙いをつけて照射する治療法です。

通常の放射線治療とくらべて、他の臓器へのダメージがかなり抑えられがん細胞だけを狙い打ちする治療ができます。胃のように臓器が運動を繰り返すような動く臓器では治療はできません。

肝臓はそういった動きはないので、粒子線治療に向いているといえます。ただ治療施設が限られており、すぐに治療が受けられないというデメリットがあります。

肝臓移植

肝臓移植とは文字通り、肝臓を移植する方法です。肝臓全体がダメージを追っていたりする場合は、治療自体が困難となります。その場合、遺伝子的に近い細胞をもつ肝臓を移植することがあります。

移植には莫大な費用がかかることがあり、通常は親族で遺伝子的に影響が少ない人の肝臓を移植する場合が多いです。移植後は免疫の過剰反応を抑えるために数年間は免疫抑制剤を服用することが一般的です。

有名人では政治家の河野洋平さんが肝臓病で治療困難となり、息子の河野太郎さんの肝臓を移植したことで無事に治療に成功した事例が有名です。


時間治療クロノテラピーとは?

時計
出店:https://www.pakutaso.com/201210323003-2.html

時間治療、クロノテラピーというものがあります。これは癌に限らず、人間の生体のリズムや時間帯に関わる特性に合わせた治療法をさすものです。

癌の場合、この時間治療の概念を入れて治療する抗がん剤を使った治療法の一つとなります。肝臓がんの治療法としては、可能であれば粒子線治療が一番良いのではないかというのが私の個人的見解です。

しかしそういった環境がない、あるいは手術ができないような状態で治療の選択肢がない場合、日本の医療の場合、抗がん剤治療を選択する場合が多いのです。

ただ個人的にはどうせ抗がん剤を使うというのであれば、がん細胞を縮小させることだけに狙いを絞ったほうが良いです。そこで出てくるのが時間治療です。

体のダメージを最小限に抑えるためには短期間で効果的に抗がん剤を有効活用するのがベターなのですが、その場合に時間治療クロノテラピーが役立つといわれています。

がん治療での時間治療、クロノテラピーとは抗がん剤治療が効果的な時間に限定して集中的に治療を施すことをいいます。それには次のような理由があるのです。

  • 抗がん剤は投与する時間によって効果が違う。
  • 抗がん剤は治療する時間によって細胞へのダメージが違う。

一般的には、肝臓がんにおける抗がん剤の効果は、昼間よりも夜のほうが効果的といわれています。人によっては夜中に抗がん剤をうつことで劇的にがん細胞が縮小したという事例もあるそうです。

一定量を一定の時間うち続ける抗がん剤治療より選択的集中での抗癌剤治療の方が効果が2倍だったというデータもあるということから、時間治療はどうせ抗がん剤を使うなら選択したほうが良いと考えられます。

自治医科大学臨床薬理学教授の藤村昭夫氏は次のようなコメントを残しています。

「抗がん剤を投与する時間によって、血中の薬物濃度や正常組織の傷害の程度が異なることが明らかになっています。正常細胞の種類によってもその傾向は異なりますが、たとえば直腸の粘膜細胞にも抗がん剤の影響を受けやすい時間帯と受けにくい時間帯があります。

大腸がん患者を対象として、ある種の抗がん剤を一定量、24時間にわたって一定の速度で投与し続けた場合と、明け方の4時および夕方16時の2回に集中的に投与した場合では、後者のほうが副作用の出現頻度が約5分の1に、さらに抗がん剤の効果は2倍になったという報告もあるのです」

引用元:http://gendai.ismedia.jp/articles/-/32647

このコメントを解釈すると、時間治療は効果が倍になることがあり、抗がん剤特有の健康な細胞へのダメージも軽減できていることになります。

がん細胞を完全に消滅できなかったとしても、手術や粒子線治療ができるレベルまで縮小させることができれば大きな希望となります。

こうした理由から時間治療クロノテラピーはがん以外にも様々な病気に対しても効果がないか注目されているのです。肝臓がんで治療法の選択の幅が少ない方の参考になればと思います。

まとめ

  • 肝臓がんの治療には時間治療クロノテラピーという考えかたがある。
  • 時間治療は抗癌剤治療の効果を大幅に引き上げる可能性がある。
  • がん細胞を大幅に縮小できれば、他の治療法への道が切り開ける。

肝臓がんは進行してしまうと治療が難しくなるがんです。むやみに抗がん剤を使用するのではなくて、より最大限に効果を発揮させようというのが時間治療です。

是非、手術ができないというやむを得ない理由で抗がん剤を選択される方は、その前に粒子線治療は受けられないのか、そして抗がん剤を選択するにしても時間治療を選べるような病院や医師を選ぶことが肝要と考えます。