2017年にがんで亡くなる人は日本の統計によると予測では1,014,000人となっています。約100万人です。これだけ多くの人が癌に罹り毎年亡くなっているのです。
しかし、癌になるとどんな理由で命を落とすのかあなたはご存知ですか?実は癌が直接の原因で亡くなる人はがんの死亡者数全体の2割くらいといわれています。
というと、実際にがんで亡くなる人はどんな理由で死んでしまうのか。今日は癌で人はなぜ死んでしまうのか、その正確な理由に注目してみたいと思います。
目次
癌で人はなぜ死んでしまうのか?
癌になって亡くなる人は具体的にどんな理由で死んでしまうのか知らない人は多いと思います。看護師の中にもがんで亡くなる正確な理由を把握していない人も時にはいるそうです。
よく考えてみればわかるのですが、がんは転移します。がんの遠隔転移はたしかに生存の視点で見た場合は非常に厳しい状況といえます。
しかし癌が転移したからといってすぐに影響がでるわけではありません。腎臓に癌が転移しても、腎臓は2つありますからすぐに死んでしまうことはありません。
肝臓に癌が転移しても、肝臓の機能が30%くらい機能していれば、これも死んでしまうことはありません。心臓への転移もよほど稀です。骨の転移に関しても、造血機能に影響が出ない限り死んでしまうことはありません。
脳などに関しては、脳幹への癌細胞の侵食が多くなれば命に関わりますが、すべての癌患者が脳腫瘍というわけでもありません。
肺癌に関しては癌の腫瘍が大きく成長し、肺の気道を塞いでしまい、呼吸に影響をきたせば命に関わります。たしかに肺の転移は問題ですが、それでも肺がんが癌患者のすべてではありません。
そうなると、そもそも癌が直接の原因で亡くなる人というのは、癌患者の中でも少数派ということになります。では癌患者の多くはどんなことが原因で亡くなるのでしょうか。
実は癌よりも感染症で亡くなる場合が多い
癌患者が亡くなる原因の多くは何らかの感染症で亡くなる人が圧倒的に多いのです。代表的な感染症としては、食べたものが誤って肺に入ってしまうことでおこる誤嚥性肺炎(ごえんせいはいえん)があります。
高齢者世代ではがん患者でなくても誤嚥性肺炎は非常に多い病気です。落語家の桂歌丸さんなども、この誤嚥性肺炎で何度も入退院を繰り返しています。
その他の感染症としては、血液にばい菌が入っておこる敗血症などもありますし、カテーテルから菌が入ってしまうカテーテル敗血症なども存在します。
しかしなぜ癌患者は感染症になってしまうのか
癌患者さんはなぜ直接癌で死んでしまうのはなく、感染症で死んでしまうのでしょうか。それには明確な理由があります。それは「免疫力の低下」です。
癌患者の人の多くは免疫力が低下する傾向にあります。免疫力が低下すれば、菌やウィルスに対抗する力が弱いので感染症にかかってしまうと悪化しやすくなります。
ではなぜ癌患者は免疫力が下がってしまうのでしょうか。それにはいくつかの理由があります。
癌患者の免疫力が下がってしまう理由
- 栄養障害
- 抗がん剤の影響
- 手術の影響
- ストレスや気持ちの落ち込み
今回ここで取り挙げたいのは、「栄養障害」です。栄養障害とは、栄養のバランスが崩れてしまい、身体に不調をきたしてしまう代謝トラブルです。
特に高齢の癌患者さんの場合は、栄養障害を起こしていることが多いと考えられます。本来人間は食事から適切な栄養をバランス良く取り入れていれば、生きるために必要な活動エネルギーから、細胞の修復まで行うことができます。
栄養障害の弊害
栄養障害を起こしている癌患者さんは、栄養不足によって細胞の修復が活発にできなくなったり、免疫力が低下したりすることで、本来非常に弱い菌であっても感染してしまい、場合によっては死んでしまうことがあります。
栄養バランスは人間の生命維持にはとても重要なことです。がん治療において、ついつい治療法ばかりに目がいってしまいがちですがよく考えてみてください。
癌にこれまでならなかったのも、癌を最終的に完治させるにも絶対に必要な物は体力や免疫力です。これらの機能がなければ癌治療は成立しえないのです。
しかし癌患者はなぜ栄養障害をおこしている人が多いのでしょうか。
癌患者が栄養障害を起こしている理由
癌患者、特に高齢の癌患者はやせ細った人が多いと思います。ひょろひょろで歩くのも難しそうな人も珍しくありません。これはがん治療の影響なのでしょうか。
もちろん、抗がん剤や内臓の手術などの影響で食事を満足に摂ることができなかった人は痩せてしまいます。しかしそうでなくても細くやせ細った人もいます。
現代医療はこの栄養障害に対する取り組みを軽視しています。それは日本の医療は栄養管理を医療とはみなしていないからです。病院の食事をみればそれは明らかです。
予算の兼ね合いなどもあり、非常にコストが抑えられています。それにより患者に必要な栄養バランスは最低限が確保されているという感じです。
私が常々思うのは癌治療とは患者それぞれに違いうはずです。標準医療の良い点は誰でも治療が平等に受けられることですが、現代ではその考えはもう古いと思います。
もう一歩踏み込んだ治療が必要です。それは患者それぞれにあった本当の意味での個別治療の時代に入っているということです。
癌患者の治療が人それぞれならば、栄養管理も人それぞれにあるはずです。本来であれば、患者の血液の状態をより詳細に調べる栄養解析をする必要があるはずです。
どのビタミンがどれくらい足りていて、どの栄養素がどれくらい必要なのかを数十品目は見る必要があります。
病院の血液検査でもタンパク質やナトリウム、カリウムなど、基本的な数値は測定しますが、具体的な食事の栄養管理、サプリメントの処方などを専門的に行っているところは少ないです。
あくまで、抗がん剤や放射線治療の数値、腫瘍マーカーの数値などに治療の比重があります。これでは患者の体力回復がないがしろになってしまい、せっかく治る病気も治りません。
栄養障害について病院側が行った調査があった
2003年に藤田保健衛生大学病院が行った調査があります。余命1年といわれる癌患者約100名を対象に、栄養障害の実態調査が行われました。
そこでは、栄養管理を適切に行いどれだけの人が回復をして、どれだけの人が亡くなってしまうのかを調べました。すると驚いたことに、適切な栄養管理をしてもよくならなかった人は17%だったそうです。
つまり8割の人は適切な栄養管理をすることで、体調が以前よりも回復したそうです。これは癌の進行が止まったとかそういう話ではありませんので誤解のないようにしていただきたいですが、体調が良くなったのは毎違いなく栄養管理をしたことに要因があります。
逆にいうと、これまで栄養管理をしてこなかったせいで、余計に体調が悪かったということの証明となります。
では癌患者はどうすればよいのか
本来は病院で栄養的な健康管理を適切に指導してほしいのですが、前述にもあるとおり、栄養管理は医療とみなされていません。ですので自分の栄養管理は自分でしていかなくてはなりません。
高齢の場合はご家族の助けが必要になってきます。しかし自分の今の栄養状態を正確に把握するには専門的な診断が必要です。普段の自分の食べている食事から推察することはあまりにアバウトで正確性に欠きます。
栄養状態を正確に把握するたには、とある専門的な検査を受けることをおすすめします。
栄養解析プログラムのススメ
栄養解析プログラムとは血液中の成分を検査し、どの成分が不足していて、どの成分が多すぎるかなどを専門的に解析する検査です。
この栄養解析プログラムは他の呼び方をしている病院もあります。呼び方の違いはこんな感じです。どれも同じ意味と捉えてもらって結構です。
- 栄養解析プログラム
- 分子栄養療法
- オーソモレキュラー
- サプリメント外来
この栄養解析プログラムを受けてどうなるのか
この栄養解析をすることで何ができるのでしょうか。この栄養解析で自分には何が足りないのかが分かります。栄養障害は適切な栄養管理ができていないためにおこります。
栄養解析ではまさに適切な栄養管理をするために、自分の今の栄養状態を知るためのものです。それは必要な食事の指導をうけたり、食事では補いにくい栄養素をサプリメントをオーダーメイドで作ってもらうことも可能です。
栄養解析プログラムはどこで受けられるのか
栄養解析プログラムはそれを専門で受け持っている病院で検査を受けることができます。ネットで「栄養解析プログラム 病院 地域名」などで検索すると調べることができます。
可能であれば、癌治療をしているような専門病院で検査を受けることをお勧めします。そういう病院の方が癌患者のことに精通しており、より細かな対応や相談をすることが可能だからです。
あくまで主治医を変えると言う話ではなく、自分の栄養状態を調べて、必要なものを正確に知るためです。
今では通販で検査キットを買い、自宅から検体を郵送して調べる方法もありますが、そのやり方はおすすめしません。
その検査は本当に正しいのか疑問なので、やはり採血をする病院で検査を受けたほうが確実だと思います。
栄養解析プログラムの費用は
病院によって費用はばらつきがありますが、1万円から2万円くらいで受けられる機関もあります。
まとめ
- 癌患者はなぜ死んでしまうか、その理由は直接癌の影響ではなく感染症が8割だった。
- 癌患者は栄養障害を起こしている人が多い。
- 栄養障害を適切に管理すると体力が回復して元気が戻る。
- 栄養状態を知るには栄養解析が必要であり、検査機関も日本には複数ある。
癌患者は直接癌によって死んでしまうなんてことはかなり少数です。殆どが何等かの感染症です。栄養状態をしっかり整えることが癌治療では必須といえます。
総合病院では栄養解析や適切な栄養指導はあまりなされていません。癌を本気で治そうとするなら、栄養状態を調べることが患者側でする必要があります。
最終的に、癌治療には体力や免疫細胞の力を借りなければ完治はできないのですから。